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梶原理紗子のユウウツ<10>

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 美味しかったわね、といいながら企画室に帰ってきて、しばらくした頃佐々木からメールが入ってきた。

「?」

 話すことがあるのなら声をかけてくれればいいのに、と思って顔を上げると、佐々木はこちらのことなんか全く気にした様子も見せないでなにやらデータを打ち込むのに忙しそうだった。

「なんなのよ」

 立ち上げていた画面を一旦最小化すると、メールを開けて佐々木から来た分を確認する。メールにしたと言うことは、急ぎって訳じゃないのかなと思いつつも、こんな事をしてくるのは初めてだったので、ちょっと気にかかりながら出てきた文字を読んでいった。

「・・・え?」

 それは、メールマガジンと呼ばれるもので、自分の気に入った情報をいち早く流してくれるようあらかじめ登録しておくいわばネット情報誌なのだが、佐々木が送ってきたのは女性服の通販のものと、『ブランド通信』という業界情報、あとは株価情報だった。
 女性服の通販サイトを開くと、午前中に高野部長が言っていたような、明らかに30代をターゲットにした『仕事服』と銘打ったものがずらりと並び、よく見ると広めに取ったウエストまわりや、パフスリーヴで隠れた二の腕周りなどがそれとわからないようにデザインされたものが多かった。色はほとんどがアースカラー、冬に向かって黒や茶が増えるのかと思ったら、今年は流行がグレイと言うことで、グレイの濃淡を組み合わせているものが目立っていた。『マーガン』では主流のショート丈やフィット感の高いラインはそこにはなく、ナチュラルで身体が布地の中で動く感じのするものが多いように思った。
 次の業界情報では、海外のブランドで今後期待できるものを言うトピックスが最初に目に入ってきた。
『スポーツブランドであるアディダスやラコステの衣料部門の強化が、今後のファッション動向にどう影響するか』
 この一文を読んだ時、そういえばラベール万代にもラコステが入るんだったと、新規出店の企画書の内容が思い出された。最近このスポーツブランドの女性ファッションは本当にお洒落になってきていて、朝の情報番組で紹介されたとき、そのロゴが入っているだけでどんな奇抜な色あわせも華やかに見えてくるから不思議だと思ったことが頭を掠める。 ふぅん、このブランドがこうやって注目されているのね、と納得したそのあとに、一番衝撃的なニュースが待っていた。


『太陽商事はショッピングセンター事業を展開する四葉不動産と共同で、婦人服のプライベートブランド『エルベリーナ』を企画・販売することを発表した。四葉不動産は関西を中心に総合スーパーやショッピングセンターを展開、昨年暮れに太陽商事と業務提携したのを期に消費関連事業にも着手する構えだ。太陽商事ではまず年内中に新規ブランドを紳士服、子供服にも立ち上げる構想と言う。』
 株価情報の中の太陽商事をチェックとあったのでそれをクリックして出てきたのはひと月ほど前のリポートで、そこには大手総合商社の太陽商事が繊維部門の強化を図るためにその重要施策のひとつとして消費拡大ビジネスに参入したという記事があった。
 総合商社としてはエネルギー価格の高騰で資源関連が上向きになり、業績的には上がっているというのは経済新聞で株価をチェックしていて知ってはいた。しかし繊維部門は国内の繊維業界の低迷を反映して、軒並み低下の一途を辿っていると思っていた。でも、この太陽商事は違った。記事を読むと全関連会社の利益のうち、繊維部門が1割強を稼ぎ出すと書かれていた。
 しかもただの総合商社じゃない。日本でも1、2を争う総合商社の1割だ、金額にして200億近い数字がグラフに表されていた。

「・・・うそぉ」

 よく読んでいくと、太陽商事はここ10年の間に名の知れている海外のブランドを数多く買収してきたとある。日本で独占的に製造・販売の出来る権利を持っているものは自分でも知っているものばかりで、これが一緒になって展開されたらどれほどの脅威になるか。
 そこでふと気になったのは、四葉不動産のことだ。
 四葉不動産はもともと戦前の三大財閥の一つで、戦後になってその形を企業連合体と変えた「四葉グループ」の中の一部門になる。関西が本拠地になるため西側経済の中心的存在となる四葉不動産に対して、関東を中心に不動産関連、特に様々な業種を組み込んだショッピングモールを展開して成功を収めている、いわば東側の経済中心になっているのが住忠不動産だった。
 ラベール万代も、名前が表に出る社名は違うがこの住忠不動産が再開発を請け負ったショッピングモールだった。
 3年ほど前に同列会社の不況で閉店に追い込まれた大型スーパーをそのまま居抜きで買い取り、外観はそのまま内装に手を入れて初期段階の開発費を抑えるというのはウチの会社が新規参入を決めたときに説明された。商業施設として魅力ある空間を作り出すためのお手伝いをする、というのが再開発のコンセプトだが、当然のことながら利益が見込めない開発はしないということだろう。その独自のマーケティング戦略と運営管理によって、今まで手がけてきた施設はことごとく成功を収めている。日本海側では今回の新潟がはじめての出店で、万代シティと呼ばれるランドマーク的な場所での再開発は絶対に失敗できないと考えているはずだ。
 高野部長は、この二つの事柄をどの時点で知っていたんだろう。
 四葉不動産の衣料品を中心とした消費関連事業への参入と、住忠不動産の地域発展をかけた再開発事業。
 対抗するというよりも、自社の顧客を護るという発想なのかもしれない。


 気になって検索をかけた『エルベリーナ』というブランドは、客層が20代から30代を中心としたコンサバティブなデザインが主流で、価格帯も大型スーパーでも販売を見越してか5,000円前後から上は12,000円、インナーとしてのカットソーでは1,000円台で買えるものがあるなど『買ってもいいかも』と思えるもので、『マーガン』からすると3,000円ほど下回る形になる。
 『エスタミ』はどれくらいの価格帯で設定するのか、販売部の部長である香西から今日の段階では説明されなかった。販売戦略としてブランド名を伏せてのコマーシャル展開を年内いっぱい行い、『ラウドネス』を掲載している主要男性誌および女性ファッション誌にはカウントダウン形式で見開き広告掲載をすること。そのほか3月の新潟出店のあと4月5月と横浜のショッピングモール、川崎の駅に併設した複合ショッピングプラザへの出店のことなどが説明されただけだった。
 どうする気だろう。
 顔をあげたところで、佐々木と目が合った。

『ありがと』

 そう言うつもりで片手を挙げて、軽くふったそれを西巻課長に見つかってしまった。

「梶原君」
「は・・・はい」

 まずい、と慌てて手を下ろすと、それには触れないで「ちょっと来て」と手招きされた。

「なんでしょう」

 机の前に立つと、ふぅと溜め息をついた課長がおもむろに、

「悪いんだけどさ」

 と言ってきた。

「明日は『KISARAGI DESIGN』さんとの打合わせだったよな、うーん、できれば速いうちがいいんだが、じゃあ来週早々にも新潟まで出張してくれないか」
「は?」
「市場調査、というか、高野部長が街の雰囲気をつかんできてくれって」
「雰囲気ですか」
「そうそう、それで」

 そこで一旦言葉を区切ると、もう一度「悪いんだけどさ」と言ってからこう言った。

「日浦と一緒に行ってくれるかな」
「・・・・・はぁ?」

 日浦と、出張?
 二人でってのは何かと問題があるかもしれないけど、ま、そこは仕事だから、面倒なのはわかってるけどそこをなんとかね、納得してもらえないかな。
 脇でごちゃごちゃ言ってる課長の言葉はもう頭に入ってこなかった。
 日浦と二人で、しかも日浦の出身地である新潟に出張・・・・・。

 うそぉ。





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