日々是好日毎日御元気

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徹底しないとダメだ・・・仕事もね

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 マジですか。
 取締役にそう言いそびれて会議室に入ると、A全紙サイズのポスターの上で主任と荒木さんがなにやら不穏な雰囲気で向き合っていた。


「何も祐志が来ることないって言うの」
「でも、市場調査だろ?出来ればインスピレーションの為にも一度見てみたいなぁと」
「だからなんで一緒になのよ」
「一緒に行けば一度で済むだろ?こっちだって写真やらレポートやらで感覚掴むよりは手っ取り早いし」
「・・・祐志」
「なに?」
「新潟出張の話、誰に言われたの」

 バタン、と音を立てたドアは取締役の仕業、僕がその音に驚いて振り返ったら、主任も荒木さんも一緒になって顔を上げた。

「・・・日浦君」

 荒木さんが先ににっこりと笑って声を掛けてきて、それとは打って変わって主任はさっと顔を曇らせると、「遅いわよ」と言ってポスターに目を落とした。

「で、出張どうなったって?」

 能天気にも取締役は二人の間に割って入って、どちらも目を合わせてこないのに困った顔をして、「なんだよ」と不平を言った。

「僕じゃないよ、僕が考えたんなら先に言ってるし」
「誰もお前だなんて言ってない」
「ゆうじぃ」

 昨日のプレゼンテーションの時とは大違いの情けない口調で取締役は荒木さんの名前を呼んで、それをひどく冷たい表情で無視すると、荒木さんは僕に向かって「コマーシャルではいつものロゴを使うけれど、それでいいかな?」と訊いてきた。
 いきなり春のコレクションの話に戻ってるんだと気がついた僕は、「はいっ」と答えると傍に寄ってポスターの上に広げられたコンテを確認する。月曜日にチェックを入れていたのは雑誌の広告で使うロゴの選定とそこの見開き左に使うコメントのフォントと行間。通常の明朝体の上に楷書でインパクトをつけたいといった僕に、明朝体を10ポイントにするか11ポイントにするかで雰囲気が違うからそこにどういった楷書の形がいいのか、探してくるといっていたのだ。そのインパクトをつけたいといった文字は「風」の一文字。来春はベースのアースカラーに組合わせた原色で表現するという、『ラウドネス』のデザインコンセプトの一つである「躍動感」を、漢字で表すとどうなるかと考えた末の選択だった。それはただのゴシック体ではありきたりで、同じ明朝体では埋没する。じゃあと思ったのが楷書だったのだけれど、何とか手書き風のまさに書きましたといった感じのがないか、そうお願いしたのだった。

「・・・これ」
「どう?」
「いいですね」
「払いの先の感じが、書いてるって感じだろう?」
「そうですね、どこのフォントなんですか」

 右には指を見ている読者側に向けて開いているモデルの写真、当然着ているのは『ラウドネス』のジャケットで、にやりと笑った顔の下に見えるシャツがくしゃりと自然に皺を寄せているのがひどく扇情的だ。荒木さんが選んだ文字もまさにそんな感じ、払った先の筆の名残が、動きを見せていい感じに仕上がっている。

「ダイナフォントの宋楷書、それをこれだと92ポイントで組んである。文字数が少なかったから、明朝体の方は11ポイントで行間は前回よりも開けたんだ」
「なるほど」

 うんうんと頷く僕の隣では、主任が腕を組んで話を聞いていた。

「で、こっちはカタログで使うレイアウト。夏のときは肌を出してたけど、今度はそれが少ないフォトが多かったからね、カラーで色気を出していったらいいと思って、前回よりもピンクと赤を多くしてみた」

 それは雑誌での先行宣伝と同時に展開するカタログのレイアウトで、年を明けると同時に店頭に並ぶ予定になっていた。モデルは全部で3人で、なかなかカッコイイ出来栄えだった。

「かっこいい・・・」
「だろ?新しいブランドはこういうのじゃないんだろうから、どうやってアプローチしたらいいのか、それが知りたいんだよね」
「え?」
「だからさ、新潟に新規出店するラベール万代のこと。レディスってことだけれど年齢層が今までよりも高いんだろう?」
「ええ」

 思わず後ろを振り返って、取締役がいるのを確認した。ブンブンと顔を横に振る取締役は、『僕じゃないッ』と声を出さずに口だけ動かした。

「あの」
「ん?」
「誰からそれを?」
「ああ」

 荒木さんはふっと笑うと、僕の隣にいる主任を気にするようにチラリと目をやった。きゅっと上がった口元がまるで悪戯でも仕掛けているように思えて、僕は思わずドキリとして主任を振り返った。

「ブランドの話は以前から来てるよ、でも時期が早まったってことで僕が言ったんだ、出店先を見に行きたいって」
「荒木さんが?」
「そう、ここの高野さんに」
「・・・高野部長ですかぁ」

 またあの人か、そう思って頭を抱えたくなった。あの人はいったい何を仕掛けてくるかわかんないな。でもそれなら昨日話してくれたってよかったのに、と言いかけた僕の腕に、主任の手が触れた。

「とにかく」

 主任が触れたところからじんわりと熱くなってくるのを感じて、なにか言わなくちゃと思うのにそれがまた出来なくて、そのまま突っ立ってるだけの僕に主任はぴたりとくっついてきた。

「新潟へは仕事で、出張で行くんだから、遊び半分でこられちゃ困るのよ」

 ね、日浦もそう思うでしょう?
 言外の圧力と言うか、なんていうか、ぎゅっと握った手の強さに僕が頷きかけると、

「遊びじゃないさ、一番人出の多い時が見たいから、日曜に行こうって言ってるだけじゃないか」
「え?」
「祐志、だからあんたね」
「ゆうじぃ、それって僕も行くって」
「・・・仕事だろ?理紗子、仕事だっていうんなら徹底しないとダメだって」

クスリと笑った荒木さんは、取締役に向かって言った。

「和孝も仕事って割り切るんなら一緒に来たっていいさ、その代わりお前がスポンサーな」

 出張費割り増しで請求するから、その覚悟でいろよ。
 そう言いきった荒木さんに、取締役は「マジ?」と言いつつも結構うれしそうで、その正反対に主任は僕の隣で「もう」と不満そうな声を漏らした。






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