日々是好日毎日御元気

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梶原理沙子のユウウツ<12>

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 香西部長のところから戻るともう正午を回っていて、でもお昼を食べる気にもならなくて企画室にいるにも気が引けて、ラウンジでぼんやりとコーヒーを飲んでいた。
 なんか、ね。
 日浦はというと、会議室で和孝となんだか2、3言葉を交わしたかと思うと私の方をチラリと見ながら、でも声も掛けずに行ってしまった。それから企画室には戻ってこなくて、おかしいなとは思ってもこっちも 仕事が待っていて、そうしてこんな時間になっちゃって。
 なんかね、なんなんだろう、私。
 香西部長は君に任せておけば安心だって、そう言った。
 高野部長はいい部下を持って幸せだなって、言った。
 仕事はきちんとやりたいし、そりゃ出来たほうがいいに決まってる。 でも、私ってそんなにバリバリやり手に見えるのかしら?
 ホント、ただ一生懸命やってるだけじゃない?自分に不相応なくらい背伸びして、むちゃくちゃ高いところに手を伸ばしてやっと届いたそこにしがみついてるだけ。ほら、もうすぐ足が地面から離れるわ、それが怖くて怖くて、なおさら頑張っているだけなの。
 なのに、どうしてそれをわかってくれないの?誰も見てくれないの?
 もっと、頑張れって言うの?

「・・・あーあ」

 なんかもう、さ。

「なんかもう、ね」

 無理なんだけど。
 手にしたコーヒーがだんだんと冷えて行く。まだ半分も残っているのに、忘れ去られたように、ただそこにあるだけになって行く。
 私もそうなるんじゃないの?
 自分だけ必死だって、そう言っているうちになにもかもが私を置いて行くんじゃないの?
 日浦みたいに。

「・・・あっ」

 自分でそう考えて、ぞっとしてカップを取り落としそうになった。強く掴んで跳ねたコーヒーが、指にかかったけれどもう熱くは感じなかった。
 今日着ているのは濃紺のパンツスーツ、どこかにかかったかもしれないと慌てて自分の姿を見下ろして、ジャケットのすそに可愛らしく丸みがついているのを思わず凝視した。
 あの時、高野部長の口ぶりはまるでもう決定したような感じだった。香西部長はまだ了解していないと言っていたけれど、でもなんだか乗り気で高野部長がもう一押しすれば日浦の配置は簡単に変わるような感じだった。
 そうはいかないと、頭ではわかっている。
 ウチの会社は本人の意思を重視する会社だと、それは重々わかってる。
 でもあの二人は、今まで大きなプロジェクトをいくつも成功させて、この会社を発展させた張本人なんだ。その二人の考える新しいブランドに、日浦の新鮮で時には奇抜とも思える感覚がプラスされたらどんなに面白いことになるだろう。
 ワンクラス上の「愛される」ファッション、可愛いばかりでなくて、大人の女性が自分が愛されることを意識して着ていく洋服。
 日浦がそれに魅力を感じないわけがない。
 だって、私が一番よく知ってるもの。
 いろんな企画を一緒にやってきて、新しいものにチャレンジするときのワクワクするような瞳や、一瞬のひらめきに自分で驚いて興奮する様や、うまく行ったときの弾けるような笑顔がどんなに素敵で魅力的か。
 そうよ、私が一番よく知ってるんだもの。

「そうよね・・・」

 日浦が高野部長のところに行くって言っても、引き止めるような真似だけはしないでおこう。にっこり笑って、おめでとうって言おう。
 そうだ、そうしよう、と思って冷たくなったコーヒーを口元に持っていった。


「なんだ、ここにいたの?」

 ゴクン、と一口飲んだところで佐々木の甲高い声が耳に入ってきた。

「もー、探したじゃない」
「え・・・あ、ごめんなさい」

 いきなりそう言われてとっさに謝ったものの、いったいなんで佐々木が自分を探していたんだろう、と振り返ると、「はいっ」と結構大きな四角い黒の箱が差し出された。

「さっきまでドライアイスと一緒だったから、まだ冷たいとは思うんだけどさ、融け過ぎちゃわないうちに食べましょ」
「食べましょって」
「ええとねぇ。錦糸町にいってきたのよ、ほら、ウチのショップがあるじゃない、あそこ」

 錦糸町、そういえばファッションビルに『ラウドネス』のアンテナショップがあった。新商品はまずそこや、ほかにも23区の中にいくつかあるアンテナショップで客筋を確認しながら売り出して行くのだ。

「で、そこの地下にこのショップがあってね、ホント美味しいんだから」

 シンプルな黒の箱の中身は、一つずつ色も味も違う丸いアイスクリームのようで、でもなんだか表面がお餅みたいに柔らかくフワフワしている。触るとまだひんやりしていて、なんだか雪見だいふくのようだった。

「佐々木さん、なにこれ」
「え?」

 やだ、あなた知らないの?
 クスン、と笑った佐々木はまず一個下のほうのそれを取り上げて私の手の平に乗せた。

「モチクリーム、雪見だいふくじゃないわよ、れっきとした、大福よ」
「モチクリーム?」

 私が思ったままを口にすると、佐々木は上のほうのを一つ手にして、「私はこれが好きなのよ」とさも嬉しそうに唇を引き上げた。
 私はというと、何がなんだかわからずに手の平の上のそれをじっと眺めていて、佐々木はそんな私を見ると、

「・・・そんな顔してないで、美味しいもの食べてすっきりするのよ」
「・・・え?」
「どうせまた彼氏の話でしょう?うだうだ考えてないで、甘いもの食べて忘れちゃいなさいよ」

 きっぱりと言い切ると、「おいしー」といいながら薄茶色のモチクリームに噛り付いた。







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オリジナル小説サイト『SP2XX5』では加筆修正した『日浦君の恋愛事情』をお送りしております。


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