日々是好日毎日御元気

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君のはセンスだ

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 でも、その話は僕はきちんと断ったはずだ。なのにそれを今、主任も知ってると荒木さんから聞くのはいったいどうしたことだろう。

「あの高野さんはやり手だからな。今まで手がけたプロジェクトは全て香西さんと二人でやったと言っても過言じゃないし、で、ほとんどが当たってるだろ?まぁ君もその高野さんに是非と言われてるだなんて、よほど気に入られたと言うか、さ」

 そこで僕の顔をじっと見つめると、すっと生真面目な顔になって言った。

「理沙子が、言うんだ」

 君の新鮮で且つ奇抜なアイディアがあの人たちに加わったら、きっと面白いことになる、と。君の感覚は若いからな、若いと言うことがどんなことなのか理沙子はもう感じているんだろうよ、だから今回のプロジェクト、『大人の女性が自分が愛されることを意識して着ていく洋服』というのを君がどう捕らえるか、見てみたいとも言っていた。

「それに、新しいことにチャレンジする時の君がすごく魅力的なんだそうだ」

 ずいぶんと嬉しそうな顔でそういうんだからな、参ったね、もうノロケかよと思ったけれど、言ってることはそのとおりだと思うよ。

「・・・そのとおり?」
「ああ、俺も君はそっちが向いてると思うけれど」
「え、あの・・・」

 どういう意味だろう、僕がそう訊こうとしたとき、先輩が正面から荒木さんに向かって身を乗り出した。

「あのさ、聞いてもいいですか」

 その目には、はっきりと『ワクワク』と書いてある。

「こいつって、そんなに期待されてるわけですか?」
「こいつ?」
「ああ、こいつ、章吾。引き抜かれるくらい出来がいいってことでしょ?」
「・・・ああ」

 クスリ、と荒木さんは目の端を細めて笑う。そのままその目を僕に向けて、「そうだね」と言った。

「日浦君は経済学部だったよね、実は俺ももともとデザインの学校に行ったわけじゃなくて、祖父の薦めもあって本当は法学部に行くはずだったんだ」
「そうなんですか?」
「ああ、でも子供のときから母の仕事が羨ましくてね、どうしても同じ職業に就きたくて、その道を模索してね」

 ふふん、と自分の母親のことを嬉しそうに話すのは、なんだか聞いていても嬉しくて「それで?」と僕は先を催促した。

「あるとき母が審査員を勤める広告デザインコンペティションで経済を専攻している学生が審査員特別賞をとったんだ。で、そこを目指してまぁコンペでは大した成績は残せなかったけど、母の事務所に入ることには成功したよ」

 フーン、と先輩も一緒になって荒木さんの話を聞いていた。僕の話なんか忘れちゃったようで、いや、忘れてくれて構わないんだけど、「じゃあ」とまた身を乗り出して聞いてきた。

「荒木さん、どこの大学でてるんすか」

 それは僕も聞きたい、そう思って手にしていたウーロン茶をコトンと置くと、いいタイミングで荒木さんの声がした。

「蒼山学院大学の『国際経営学科』だけど」
「えっ」
「えぇっ!」
「な・・・なんだ?」
「だって、じゃあ荒木さんは俺らの先輩ってことっすよ、なぁ章吾」

 まぁ俺らは普通の経済学部でしたけどぉと言いながら、バシン、と肩を叩いてワハハハと大笑いする先輩とはうらはらに、僕は「うそぉ」と驚いていた。

「じゃ、主任も?」
「ああ、理沙子も、和孝も同じ。和孝は2年上だけど」
「うわぁ・・・」

 そういえばウチの会社、大学の話なんてほとんど出ないし、学閥よりも能力主義だから僕みたいにショップ上がりでも企画室にいられるし、またそうじゃないとウチの会社ではいらないって言われるしなぁ。
 そう考えると、改めて取締役の方針がすごいんだなって気付かされる。自分の出来ることとやりたいことをやって、その能力を伸ばしてもらえる、育ててくれる、そういうことだ。

「まぁあの大学は、自由な発想と深い教養に裏打ちされた人間形成を柱に、自ら問題を発見分析し、解決することに喜びを感じる人間性を育むってのが学部の理念だからな。だから日浦君のように自由で快活な感覚を持った人間が育つってものなんだよ」
「はぁ、そうなんですか」

 俺なんかそんな風に考えて大学生活送らなかったですって。ハハハ。
大学の先輩だとわかったとたん、それまでの馴れ馴れしさとはまた違った身内に対するような接し方で上機嫌になった先輩は、そのついでとばかりに僕の話をまた持ち出した。

「で、章吾は荒木さんみたいにデザイン関係の才能があるってことっすかね」

 その言い方は、まるでおんなじ学校を出れば誰だって簡単にその『才能』と言うのを手に入れられるんだろうとでも聞いているようで、それは違うだろ、と言おうとした僕の横で、

「いやぁ、日浦君は違うって」

 きっぱりと言った方がいい様子で、荒木さんは苦笑した。

「彼のはセンスだ、才能じゃない」

 君は目新しいものや自分の知らないもの、わからないものや奇抜なものに抵抗ないだろ?そうして今までにないひらめきに、驚いたりするだろう?何をどうしたら人目を惹くのか、惹きつけるのか、考えなくても解るだろう?
 それは、俺達のやってることとは違うものなんだ。別の場所で活かせるものなんだ。それを解っている人がいるということなんだ。

「理沙子もわかってるよ、だから言ったんだ、『引き止めるつもりはない』って」
「・・・主任が」

 高野部長が主任にそのことを話したと聞いたときよりも、その一言はショックだった。
 僕はもう断ったのに。
 その場で断ったのに。
 でも、その事を主任に言えなかったのは、どうしてだったのか。
 今からじゃあもう、遅いのか。

「あの」

 僕はスツールから落ちるようにして立ち上がって、荒木さんと先輩に向かってわずかに頭を下げた。

「電話してきます」
「あ、ああ」
「じゃあ、こっちは上原君と飲んで待ってるよ」

 あとで新潟行きの話をしよう、そう言うと荒木さんは「次は強めのマティーニがいいな」と先輩に笑いかけた。


 僕は店内の騒音を避けながら店の外に出ると、胸のポケットに入れていた携帯電話を取り出して、ぎゅうっと握り締めた。
 なんて言おう、そう考える暇もなしに僕は主任の番号を呼び出して発信ボタンを押した。





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