日々是好日毎日御元気

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上原圭一の懸念

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「あのさ」

 章吾の姿が派手に店のロゴが張り付いたドアから消えたと確かめてから、俺は荒木さんに声をかけた。

「あんた、なんで居座ってんの」


 俺の店、六本木『ANAGURA』はそこそこに人気で雑誌なんかでもそこそこに有名って言っていいくらいになってるスタンディングバーで、毎夜うら若いおねぇ様達がスタッフ目当てにやってくると話題の場所だ。
 中でも俺はカルい口調と落ち着いた物腰って言うギャップがウケまくりの一番人気と言ってもいい。いやだってさ、それがウチの売りだって自覚してるんだから、言い切ったって構わないでしょう?『ANAGURA』のケイちゃんにかかれば恋の悩みなんてあっという間に解決!、気に入らない上司へのうっぷんもあっという間に消滅!、OLのおねぇ様方の強い味方!、それが俺なんだけれど。
 この人にはそんなの関係なし。
 何がどうなってそうなってるのかわかんないけれど、章吾の部屋にこの人が入り浸って居座ってこれで3日目、そりゃこの人の恋人っていう中山さんと痴話げんかしてるってのは知ってるけど、だからって何も章吾じゃなくたっていいじゃん、てことで。
 説明も遠慮も一切なし、ガッコの先輩だったって言う新情報もかまやしない。で、真ん前に陣取っていきなり突きつけてやった。

「え?」

 ドライマティーニは?と、とぼけたことを訊いてくるので「ちゃんと答えたら作ってやるよ」と笑って言ってやった。しかもとびきりのヤツ、俺の作るドライマティーニはほかとは違うんだから、と言いやしないけれど口の端には乗せてやる。

「ふーん」

 そうしたら何が面白いのか、荒木さんはにやりと笑うと頬づえをついて俺を見返した。
 つーか、なにその余裕綽々さ加減は。

「君は、彼が好きなんだな」
「・・・なに言ってっ」
「いや、そのまんま。君は日浦君が好きなんだろう、先輩後輩とかじゃなくて、さ」

 わかってるよ、と付け加えた。
 いやまぁ、それはそうなんだけれど。
 ていうか、好きってのもいろいろあって、俺の場合はそのいろいろのほうなんだけれどさ、それってどこがどう『ただの好き』と違うのかってのは説明しがたいんだよね。
 と、もう何度も俺自身が考えてることをまた頭の中で繰り返す。そ、章吾のことを好きってのは『ただの好き』とは違うんだなぁ。なんてのを、力説しても解ってもらえるとは思わないけどね。
 言えない分、ただ黙って目の前の荒木さんの観察に回してみた。
 しかしさぁ、こうやって間近で見ると、あの梶原さんとこの人は結構似てるね。そりゃそうだよな、血がつながってるんだもん。
 目がデケー、睫毛ナゲー、肌って、おい髭はどこ行ったんだよ、手の爪までカッコイイ形してやがる。そういやー梶原さんの爪の形もキレーだった。つけ爪してんのかと思ったけど最近そういうの多いからさ、見極めるの結構得意なんだよね、ありゃあ天然モノだった。いいよなぁはなっからキレーに出来てる人たちって。エステとネイルサロン通いまくりのおねぇさん方に見せてやりたいよな、ぜってー悔しがるって。
 なんて見当違いのことを考えながらマジマジと見てたら、「なんかついてる?」とマジでビビられた。

「あー・・・梶原さんと似てるなって」
「理沙子と?そりゃあ、姉弟だし」
「うーん、まぁそうすよね」

 姉弟か、うーん、まぁ俺のもそれに近いのかも。

「だったら梶原さんに悪いと思わねーの?あんたが居座ってんのってあの人だっていい気しないだろ」
「いい気、ね」

 そりゃそうかもしれないね。
 ふん、と鼻先で笑ってそっぽを向いた。あれ、それってなんか挙動不審じゃない?
 なんか隠してるような、訊かれたくないような、なんだけれど気にして欲しいようなそんな感じ。恋に疲れたおねぇさん達の仕草に似てるようで、・・・でもなんか違う、なんだろう。

「それとも、それ狙ってるとか」
「・・・は?」

 おいおい、狙ってるって言うのはなんだい、彼は理沙子と付き合ってるんだって、それは君も知ってるだろう?
 とまだ余裕かました言い方してる荒木さんは、でもちょっとだけ早口だった。ああもう、十分不審不審、だからもうちょい突っ込んで訊いてみる。

「章吾は中山さんに似てないこともないしなぁ・・・どこか天然はいってるところは似てっけど、だからってあんたが狙うにしては手近過ぎるか」
「・・・おいおいおい」

 何を勘違いしてるんだ、と苦笑した荒木さんは、でもそんなんじゃないよとは言わなかった。

「あいつ、イイ線いってるんじゃないの?」
「上原君、君は何が言いたいんだ」
「なにって・・・」

 なんでしょうね。

「全く、へんなことを考えておかしなことを言われるのはかなわないな」

 チラリと見せたのは俺に向かっての怒気。でもそれはすぐに引っ込めた。
 そうして脚を組みなおして店のドアのほうを気にした荒木さんが、すいと向いた横顔に、俺は突然理解した。
 ちょっとだけ笑って、ちょっとだけ憎らしげで、ちょっとだけ諦めてる、何にも考えていないふりの横顔、それって章吾に向けられているものじゃないんだ。当然俺でも、まして今ここにいない中山さんでもない。

「・・・あんた、もしかしたら」

 振り向いた顔は、何も言うなと語っていた。

「あの人が羨ましいのか」

 言ったすぐそのあとに、章吾が携帯電話を持ったままこっちに戻ってくるのが見えた。入ったところでホールスタッフに声をかけられて、笑って答えているのが目に入った。俺の視線に気がついたのか、荒木さんが斜に構えて章吾に向かって片手を挙げる。そこには今のなんとも言えない冷たい表情は微塵もなかった。

「新潟から帰ってきたら、自分の部屋に戻るよ」 

 章吾がもうすぐここに辿りつく、その微妙な距離を見計らったかのように横を向いたまま呟いた。



「きつめのマティーニね、今お作りしますよ」

 カウンターのスツールに腰を下ろした章吾が「うわ、先輩のってマジでキツイって話なんですよ」と荒木さんに笑いかけるのを聞きながら、俺はカットの入ったミキシンググラスを手に取った。






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