日々是好日毎日御元気

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その日 7月16日 <5>

地下道は、正直入るのが怖かった。
それまでの道のりで足元の悪さが尋常でなく、次にさっきと同じくらいの揺れが来たらいったいどうなるのか、それを考えると入りたくはなかった。
でもそこが一番の近道で、たった100メートル突っ切れば駅の向こう側に出る、それだけ思って階段を駆け下りた。
子供やお年寄りも使う地下道への階段は、一段の段差が極端に低いもので駆け下りようとするとどうしても歩幅があわない。ダンダンダンと大股で飛び降りるようにして下まで行き、向こう側が明るいのを確認してから一気に走ることにした。
仕事の格好のままだったから、足元はハイヒールだ。それにたいして体力もないから途中で息が切れて立ち止まりたくなった。向いから自転車に乗った男の人がやってきて「気をつけろよ」と叫んでいってしまった。ぶつかるのを怒られたのかと思ったけれど、そうではなくて真ん中の辺りが大きく盛り上がっているのをさしたんだと、走りながらそれを見つけて気がついた。
地上に出たところでは、人々が本屋やスーパーの駐車場になっているところに何人かずつ固まって座り込んでいた。不安そうなのは誰も同じで、歩いている私を目で追いかけているのがわかった。
ガストに居るとめぼしをつけて、とにかく国道8号線の前あたりまで行ってみよう、と進んでいた左手の駐車場に、娘が2人ほかの人たちと一緒に所在無げに立っていた。

「おかあさん」
先に声を挙げたのは下の娘の方だった。上の子は携帯電話でどこかに電話をしていて、私の顔を見るとそれをパチンと閉じて言った。
「電話したんだけど全然通じない」
それを聞いて、私は自分の携帯電話を取り出してまずは主人に電話を掛けてみた。呼び出し音もならないで、プープーという音しか聞こえてこなかった。
「とにかく会社まで行こう」
家に帰るにしろ、ここにいるわけにはいかないと娘の手を引いて今来た道を戻ることにした。私は下の子の手を、そうして娘2人は互いに手を繋いでさっきの地下道まで来た。
「入るの?」
聞いてきたのは上の子だ。それには「行くしかないでしょう」と応えてきたときと同じように走りこんだ。
走り出した私に「待って」と下の子が叫んだけれど、こんなところで立ち止まるわけいかないでしょう、落ちてきたらどうするの、と怒鳴り返した。
今思うとかなり興奮していたんだと思う。
また100メートルを走り終えて表に出る途中、もう外が見えてきたところで上の子が「待ってやって」と言ってきた。
「こいつ、ちゃんと呼吸が出来てない」
階段の途中で立ち止まって、ゼイゼイと息をしている下の子の顔を覗き込んだ。真っ青になって、帽子を握り締めていた。
「過呼吸かもしんないから」
上の子がその帽子で顔を覆って深呼吸するようにと言った。何度か息をすると手を振って大丈夫だと合図して来たので、また手をとって地上へ出た。
駅にはたくさんの人が集まっていて、入り口から溢れているのが見えた。
先ほどここに来た時には気がつかなかったけれど、地下道の前が水と泥でぐしゃぐしゃになっていた。雨なんか降ってないのにどうしてだろう、とそのときはたいして気にも留めずに通り過ぎた。

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