日々是好日毎日御元気

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その日 7月16日 <8>

薄暗い中で、硝子の破片が飛び散っている場所でできることは限られていた。散乱しためざまし時計を拾い上げ、足の曲がった陳列棚を倒れないように元に戻した。壊れたテーブルの下になったメガネケースを一時カウンターの上に上げて、熱帯魚を飼っている水槽から溢れた水から濡れるのを避けた。
細かくあたりに散らばる硝子の破片は、ショーケースが割れた破片ばかりではなかった。裏入り口から正面にある陳列棚にディスプレイしてあった引き出物の茶碗やグラスのセット、「落としても割れない」というのが謳い文句のサラダボールセットの残骸が一面に広がっていた。
熱帯魚の入っている水槽はかろうじて倒れてはおらず、でもその半分の水を床に溢して、ろ過装置を下に落としていた。食器の破片の間に、熱帯魚のアカヒレが飛び出してピチピチと横たわっていた。
私は、足元でまだ確実に生きているとわかるそれを、拾うことが出来なかった。
おかしいかもしれないが、ひどく怖くて気持ち悪いのだ。
今この状況で、どうしてそれが出来ないんだと我ながら情けなくなったが、どうしてもそれを素手で拾い上げることが出来なくて、そばに落ちていたA4サイズのコピー用紙を4つ折りにして自分としてはそぉっとそぉっと持ち上げるつもりでいた。
「あんたなにやってるの」
頭の上から、奥さんの声がした。
「だって拾えないし」
私が生き物が苦手だと知っている奥さんは、しょうがないわね、といった顔でさっさとアカヒレを攫み挙げると、ぼちゃんと半分になった水槽にそれを戻した。
「割れないって言うのにねぇ」
そう言って拾い上げたのはサラダボールの破片で、見事に真っ二つに割れているのが4個、かろうじて1個はそのまま床に転がっていた。
割れたものはダンボールに一時入れておこう、と言うことになって、倉庫から持ってきたダンボールにとにかく何でも壊れているものは突っ込んで行くことになった。ほとんどが瀬戸物、あとはどこから飛んできたのかプラスチックの破片や飾っていた造花なんかを、ある程度仕分けしてドカドカと入れていった。
濡れた床はそこらへんから掻き集めた雑巾で拭っては絞り拭っては絞りを繰り返して、最後はその雑巾ごとゴミ箱行きとなった。
床の掃除が終わった頃、母親の様子を見に行っていたもう一人のスタッフが少し興奮した様子で帰ってきた。
「大丈夫だった?」
家の状態を確認して、帰ってこれないかもしれないねとこっちでは話していた彼女が慌てた様子で走ってくるのに、何かあったのかと思って聞いてみた。
「坂の上の店が全壊してる」
「え?」
「そこの坂の上の店が全壊してて道が通れない」
そのとき、誰もそこで何が起こっているのか知らなかった。彼女は店のあるビルを裏から出て、すぐ左に続く坂を上がって右に曲がれば自宅まで行くのに一番近い道を通れるので、その経路を使おうとしたらその道、えんま通り商店街は通りの両側が大きく崩れていて通れる状態ではなかったと教えてくれた。
「嘘でしょう」
それしか言えなかった。
外の駐車場で話を聞いていたとき、防災無線が市の災害対策本部からの情報を流してきた。

『こちらは市の災害対策本部です。柏崎刈羽原子力発電所の状況についていお知らせします。この地震による柏崎刈羽原子力発電所の放射能漏れの危険は少ない模様です』

「てことはさ」
社長の息子さんが、少し疲れたように言った。
「漏れてるってことだよね」
あれだけ揺れたもんな、というのにそうだねしか返すことが出来なかった。




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